処分禁止の仮処分:NO,2(経過説明)申立人は誰?

処分禁止の仮処分:NO,2(経過説明)申立人は誰?

ここでは、処分禁止の仮処分(経過説明)について、話します。

事の始めが、クルマを買った人が、陸運局の登録事項証明書(現在記録)の備考欄をよくよく見たところ、東京地方裁判所の仮処分が登録されています。仮処分が登録されたのが30年前です。
これを抹消したいということでした。

この仮処分を抹消しない限り、クルマが存在している以上、永久に登録されたままの状態です。
しかし、この仮処分を抹消しないからと言って、何も実害もありません。
30年前に登録された仮処分なので。例え、仮処分の債権者が何を言ってきても、もはや時効で、その債権は消滅しています。
ただ、現在フェラーリを所有している人にとっては、クルマにキズはなくても、書類上のキズがあるので、気になると言えば気になります。
それに、フェラーリを売るときは、実害がないことも含めて、仮処分が登録されていることを説明しなければならないということがあります。

今回の案件はクルマであるので、クルマの場合も不動産と同じ手続きをします。
クルマの場合も、申立てと抹消手続きは裁判所を通し、仮処分の登録も抹消も、クルマの登録を行う陸運局という登録機関が行います。

仮処分の抹消は、前の所有者が仮処分の取り下げを裁判所に申立ててくれるのが、一番簡単な方法です。

最初の話しで、クルマの仮処分が登録されたのが30年前です。果たして、仮処分を申し立てた人が、仮処分の取り下げをしてくれるでしょうか。

クルマを買って仮処分が登録されていることに気が付いた人が、私にこの仮処分の抹消を相談しに、というよりも、抹消の手続きを依頼しにきました。
この人は、裁判所に出向き、裁判所書記官と打ち合わせをしたそうです。
難しくないという話だったので、弁護士に依頼しないで、司法書士の私に依頼しに来ました。
弁護士に依頼すると費用が高いという理由です。司法書士に依頼すれば費用が安いと思っていたようです。

仮処分抹消までの経過は、次のとおりです。

クルマの過去の履歴が記載されている登録事項証明書を取得する。

依頼人が持参したクルマの登録事項証明書(現在記録)には、東京地方裁判所に仮処分が登録された旨が記載されているだけで、仮処分の裁判上の当事者、債権者が記載されていません。
不動産の場合は、債権者の住所と氏名が記載されるので、これが当事者を知る手がかりとなりますが。

登録事項証明書には、車検証にも記載されているほかの内容も記載されています。
車名が記載されています。車名はフェラーリです。
そんなにクルマの興味がない私にとって、フェラーリは、高級車で、貧乏人の私には到底手の届かない代物だという理解はしてました。本物は見たことがなく、テレビで見たことがあるだけです。
今回問題のフェラーリが最初に登録された年月が登録事項証明書に記載されています。初年度登録が昭和60年です。今年が昭和95年なので、35年経っていることになります。
この段階では、このフェラーリがどれだけ価値のあるクルマか知りませんでした。

そこで、仮処分の当事者が誰なのか調べるために、陸運局に行って、過去の履歴が記載されている登録事項証明書(保存記録)を取得することにしました。

過去の履歴が記載されている登録事項証明書(保存記録)には、次のように記載されています。
仮処分の登録の前後には、所有者として次のように記載されています。所有者が取得した原因は記載されません。
まず所有者:A→次が所有者:B→その次が仮処分→その次が所有者:A→その次が所有者:Cです。
仮処分に関わる人は、A・B・Cいます。Cは後で分かったことですが、CはAの相続人です。

そこで、考えることは、仮処分の裁判の当事者が誰だったのかということです。
30年前のことなので、仮処分の裁判記録は裁判所にはありません。裁判所から陸運局に嘱託郵送された仮処分に関する書類も、陸運局に存在していません。
そのため、仮処分の当事者を推測するしかありません。

フェラーリの所有者がAからBに移り、例えば、AがBに対して代金の支払いのことで、争いがあり、AがBに対して裁判をし、裁判の過程で、Bから第三者への譲渡を防ぐ目的で、Aが処分禁止の仮処分を裁判所に申し立てたと推測します。
不動産の場合の処分禁止の仮処分も、こういう流れです。

登録された仮処分の後に、所有者がBから元の所有者Aに移ったということは、A・B間の争いが解決して、BからAに所有者が戻ったと考えるのが普通です。

仮処分を申し立てたと推測できるAを訪問して、仮処分の取り下げをしてくれるか、確認する。

そこで、仮処分の申立人がAだと推測できたので、仮処分抹消の方法として一番簡単な方法として、仮処分を申し立てたAが仮処分の取り下げをしてくれれば、これで一件落着です。
そうなれば、この先の話しもなくなるので、楽です。これで終わりです。

ところがそうはいかないことになるからこの話しがあります。

フェラーリの登録事項証明書にAの住所と氏名が記載されているので、Aを訪問するために明細地図でAが住んでいる場所を確認します。
ここで、司法書士しか思いつかないことを私がしました。
Aの住所と氏名から、Aが居住する不動産がどういう権利関係になっているのかを事前に調べた方がいいかなと思いました。
そこで、Aの住所から、不動産の登記事項証明書を取得しました。

そうしたところ、不動産の登記事項証明書には、次のように記載されていました。
所有者の後に、C名義で相続を原因に登記されていました。
それも、C名義に移転する前の所有者の名字がクルマの所有者だったAの名字と同じだったのです。
あれえ、このCさん、どっかで見たことありますねえ。
そう、フェラーリの登録事項証明書で、仮処分の申立人と推測されるAに所有権が戻った後に、所有者と記載されているCです。

ということは、ひょっとして、フェラーリの登録事項証明書で、仮処分の申立人と推測されるAの相続人がCさんなのかもしれないと。
かもしれないと推測する理由は、フェラーリの登録事項証明書には、Cさんが所有者となった原因が記載されていないので、確定的ではなく、相続人かもしれないと推測できるだけです。
それに、フェラーリの登録事項証明書に記載されているAとCさんの住所が同じなので、これはほぼ間違いなく、AとCさんが親子関係かもしれないと推測がつくわけです。
でも、これ、100%ではありません。

いずれにしても、明細地図で確認したCさんをとりあえず訪問することにしました。
取り下げに応じてくれれば、一番簡単なのですが。

この話しはまだまだ続きます。

話しが長くなるので、この続きは次回、話します。

参照
最初:戻るNO.1
処分禁止の仮処分:NO,1(基本説明)
処分禁止の仮処分:NO,3(経過説明②)取下げしてくれない
処分禁止の仮処分:NO,4(解決方法)

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