夫が不在者の場合の住宅ローン返済滞納

夫が不在者の場合の住宅ローン返済滞納

相談事例

  • 夫が不在者
  • 住宅ローンの返済が滞っている
  • 妻が連帯債務者
    どうすれば、よいか?

住宅ローンを返済しないと、どうなるか

一般的には、
住宅ローンを返済していないと、そのうち(約3か月後)、不動産に差押の登記がされてしまいます。
この差押は、競売開始決定という理由で、債権者(抵当権者)が裁判所に競売を申し立て、裁判所が差押の登記を登記所に依頼して登記されます。
所有者と債務者には、裁判所から差押の通知が郵送されます。

この差押が登記されてしまいますと、その後に、競売の入札日が決まります。
任意売却して、債務を清算するには、競売の入札期日の前日までに、ずべて金銭の清算をしなければなりません。
ここまで約6か月で終了してしまいます。

(最近は、不動産によっては、任意売却よりも競売の方が高く売れる(入札金額が高い)不動産もあるようです。)

ですので、これからは、時間(月日)との闘いとなります。

注意すべき点は、固定資産税、市県民税、健康保険料、国民年金をきちんと払わないと、不動産に差押(参加差押)の登記がされてしまいます。
この差押の登記がされたからといって、すぐに、処分されるわけではないので、慌てることはありませんが、これらの税金などの遅延損害金の利率が年14%以上なので、どんどん金額が増えることになります。
特に、不動産を売却して、住宅ローンを清算しプラスとなった場合でも、これらの滞納している税金が多いと、場合によっては、何も残らなくなります。

連帯債務者と共有持分の有無

妻が住宅ローンの連帯債務者の場合であっても、不動産の共有持分を持っていない場合があります。

プラス・マイナスの見込みを検討

任意売却または競売になっって債務の清算をした場合、プラスになる見込みはありますか?マイナスになりますか?
例えば、3,000万円で購入し、現在の住宅ローンの残高が2,500万円で、任意売却の売買代金(売れる金額)が2,000万円の場合、
2,000万円-2,500万円=-500万円で、マイナスになります。
マイナスになった場合、妻が連帯債務者なので、500万円を返済しなければなりません。
500万円を返済できない場合は、自己破産という方法になるのでしょう。
不動産を失って、借金だけが残って、借金を返済しても意味がないので。

不動産を失って、借金だけが残るような場合

妻が不動産の共有持分を持っていても持っていなくても、

明らかに、不動産を失って借金だけが残るような場合、任意売却を選択しても意味がありません。
任意売却するには、売却するための手間暇がかかるからです。
ただし、任意売却する際、買主が、引っ越し費用や引越し時期を考慮してくれれば、手間暇かけて任意売却する意味はあります。

このような買主の考慮がなければ、裁判所の競売手続に任せた方がよいでしょう。
競売手続終了後、自己破産してしまうので。
手間暇がかかりません。ただし、引っ越し費用や引越し時期は、ご自分で備える必要があります。

不動産を失って、借金だけが残るような場合、

妻が不動産の共有持分を持っている場合、

まず、自己破産の申立てをした方がよいかどうか、という点です。
自己破産の申立ての場合にも、申立費用がかかります。(手間暇がかかります。)
共有持分を持っている場合に、自己破産の申立てをすると、破産管財人が選任されます。この破産管財人が今後、手続を進めます。
共有持分は、破産管財人が管理する「破産財団」に属すことになります。
通常、破産管財人は、裁判所の許可を得て、不動産を売却し、債務の清算をします。

ところが、不在者の夫も持分を持っているので、破産管財人が、単純に不動産を売却することができません。
持分だけ買う人は通常いないし、それだけで、債務の清算をすることができません。
夫については、不在者であるので、この場合、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てます。
(手間がかかります。申立て費用がかかります。)
場合によっては、破産管財人が利害関係人としての立場で、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所にしてくれるかもしれません。
不在者財産管理人が実際、選任される時期は、申立てをしてから約6か月です。(もう少し短いとしても4か月はかかります。)

では、どうしたら

以上のように考えてきますと、
まず、
妻が不動産の共有持分を持っている場合で、自己破産を選択する場合は、すぐに始める必要があります。
遅れると、住宅ローン会社が競売申立てで差押の登記がされてしまい、競売となってしまいます。
その前に、破産管財人が選任されると、破産管財人が住宅ローン会社と折衝します。
夫の不在者財産管理人選任の申立てもすぐにする必要があります。

ということで、このようなやり方は、結構、大変、面倒な手続をしないといけません。(手間暇、費用がかかります。)

そこで、結論としては、
不動産を失って、借金だけが残るような場合で、
妻が不動産の共有持分を持っていても持っていなくても、
そのままにして、競売で処分されるのを待ちます。(手間暇、費用がかかりません。)
その代わり、引っ越し費用や引越し時期を考えておきます。
自己破産の申立ては、その後にします。

不動産を売って、プラスになる見込みがある場合

(借金が無くなる)、(税金などの滞納に気を付けてください。)
妻が不動産の共有持分を持っていても持っていなくても、
夫の不在者財産管理人選任を申し立てる意味があります。
残ったお金で、不在者財産管理人に対して、税金の立替え費用、慰謝料、損害賠償を請求できます。
ただし、不在者財産管理人が実際、選任される時期は、申立てをしてから約6か月(もう少し短いとしても4か月)かかります。

住宅ローン会社のする競売の申立て、差押との関係で、競売が先に行われてしまうことが考えられるので、
不在者財産管理人選任の申し立てを、すぐにします。(住宅ローン会社には不在者財産管理人選任の申し立てをした旨を連絡し、しばらく競売申立てを待ってもらうように頼みます。)

夫に保険などがある場合

失踪宣告との関係

失踪宣告は、最終的に、死亡したことにしてしまう制度です。7年以上の生死不明の状態が必要です。現実的にありえないでしょう。

不在者財産管理人の予納金

予納金は、裁判所から不在者財産管理人に対し、報酬として支払うものです。
不在者財産管理人のした仕事に応じて支払いますので、余る場合もあります。その時には残金を返金してくれます。

不在者財産管理人を立て、税金と婚姻費用分担費用を引き出したい。司法書士報酬は?

不動産を失って、借金だけが残るような場合でも、夫の保険があるような場合、不在者財産管理人を立てる意味はあります。
その保険金額にもよります。
少なくとも、保険金額がざっと100万円以上ないと、この手続をする意味がないと思います。
(請求された不在者財産管理人はこれに対処するため手間暇がかかるので、さらに報酬を家庭裁判所に請求することになります。)
あるいは、住宅ローン会社がこの保険金のことを知った場合は、不在者財産管理人に対して請求するこも考えられます。

税金と婚姻費用分担費用を引き出したい。

不在者財産管理人に対して請求することになります。
簡単には、不在者財産管理人は支払いません。
不在者財産管理人の管理するお金は、特別の場合、家庭裁判所の許可を得なければ支払うことができないからです。
もし、家庭裁判所が許可しない場合、妻が不在者財産管理人を相手方として裁判するしかありません。
このような場合、裁判所に支払う手数料(請求する金額に応じて決まります。)のほかに、司法書士報酬がいくらになるかは、依頼する司法書士によって異なります。
ざっと、10万か20万+成功報酬10%位ではないでしょうか。

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