離婚による財産分与ができる財産
事例
元夫から元妻に対し、離婚後の財産分与として、元夫が婚姻期間中に得た次の財産を財産分与としたい場合、これは認められますか?
- 親から贈与を受けていた不動産
- 亡くなった親から相続で取得した不動産
答え
基本的に、当事者が合意すれば、これらの「特有財産」も財産分与の対象とすることができる。財産分与の中に入れることができる。
財産分与の対象となる婚姻中の財産
通常、「財産分与の対象となる婚姻中の財産」という場合、何を想定して言うのでしょうか。
これは、家庭裁判所での調停や審判を想定した場合のことを言います。
元夫婦の一方が、離婚後の財産分与について家庭裁判所に調停を申し立てる場合、財産分与の対象となる財産は、基本的には、「共有財産」に限定されます。
ただし、「特有財産」や「実質的共有財産」であっても、元夫婦の他方の協力など貢献度によっては、家庭裁判所で認められる場合もあります。
結婚中の財産は、一般的に次の3つに分類されます。
財産分与の対象となる財産は、「共有財産」と「実質的共有財産」。
「特有財産」は財産分与の対象にはならない。
- 特有財産
婚姻前からそれぞれが所有していたもの。
婚姻中に一方が親から相続したもの。
婚姻中に一方が親から贈与を受けたもの。
それぞれの装身具など社会通念上、それぞれの専用品と見られるもの。 - 共有財産
婚姻中に夫婦の合意で共有とし、共有名義で取得した財産、共同生活に必要な家財・家具など。 - 実質的共有財産
婚姻中に夫婦が協力して取得した財産で、夫婦の一方の名義になっているもの。
特有財産である不動産を財産分与の対象とする場合の問題点
特有財産である不動産とは
- 婚姻前からそれぞれが所有していたもの。
- 婚姻中に一方が親から相続したもの。
- 婚姻中に一方が親から贈与を受けたもの。
当事者の合意で、これらの特有財産である不動産を財産分与の対象とする場合の問題点は、何でしょうか?
- 不動産の名義変更の登記を申請する登記所は受け付けてくれるのか?
- 贈与税の問題はあるか?
- 不動産取得税の問題はあるのか?
答え
当事者の合意で、これらの特有財産である不動産を財産分与の対象とすることができる基本的な考え方
財産分与は、離婚時の夫婦の財産の清算という意味があるので、夫婦の一方が、他方所有(夫婦共有)の不動産に住み続けたい場合、共有財産としての金銭の代わりに、不動産で他方に移転する、財産分与するということが考えられる。
この場合、「不動産」が「共有財産」か「特有財産」かということは重要なことではない。
- 不動産の名義変更の登記を申請する登記所は受け付けてくれるのか?
登記所は、受け付ける。登記することができる。(平成26年10月、横浜地方法務局旭出張所で登記完了) - 贈与税の問題はあるか?
通常のことを想定すれば、一戸建てやマンションの一室程度のものであれば、贈与税の問題は生じない。(平成26年10月、東京国税局電話相談室に確認) - 不動産取得税の問題はあるのか?
不動産取得税(都道府県税)については、財産分与により不動産を取得した人にかかる。
夫婦の一方がその親から相続で取得し不動産(特有財産)などの場合、夫婦の婚姻中に取得したものとはいえず、原則通りの税率で、不動産取得税がかかる。
夫婦の婚姻中に取得したものであれば不動産取得税の軽減を受けることができる。
不動産取得税については、離婚に伴う財産分与の不動産取得税の減税1を参照してください。
財産分与による不動産の名義変更登記については、離婚に伴う財産分与を参照してください。
譲渡所得税については、離婚による財産分与と譲渡所得税を参照してください。